現在進行中の事件などに関しては、本家およびはてなブックマークをご参照ください。

2008年12月23日

【事件・人 質問1】 ハロッズ爆弾事件とは。

【事件・人 回答1】
1983年12月17日土曜日の昼過ぎ、クリスマス・プレゼントの買い物客で賑わうロンドン西部の高級百貨店「ハロッズ」の脇に停められていた車が爆発、一般人のほか警官やジャーナリストを含む6人が死亡、90人あまりが負傷しました。Provisional IRAの爆弾攻撃でした。

80年代はイングランド、特にロンドンで何度もIRAの爆弾攻撃が行なわれています。この事件もそのひとつですが、「クリスマス前の買い物」という点でいっそうショッキングなものとして受け止められました。

※左の画像は、新聞スタンドに立てられた「今日のトップニュース」のボード。「ハロッズ爆弾――私たちが忘れることのない日」。

■参照記事:
ウィキペディア:
http://en.wikipedia.org/wiki/Harrods_bombing

CAINデータベース:
http://cain.ulst.ac.uk/othelem/chron/ch83.htm#Dec
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/chron/1983.html

当時の報道:
BBC ON THIS DAY: 17 December 1983: Harrods bomb blast kills six
http://news.bbc.co.uk/onthisday/hi/dates/stories/december/17/newsid_2538000/2538147.stm
爆発直後の現場の様子の映像、現場に居合わせた人のインタビューも。また、ハロッズの後に爆弾予告電話がなされたオクスフォード・ストリートの封鎖の様子も(ただしこちらは偽の予告電話)。

事件後、レーガン米大統領からサッチャー英首相への書簡:
http://www.margaretthatcher.org/archive/displaydocument.asp?docid=109279

以下、2007年12月に本館に書いたものの転記(加筆などあり):
http://nofrills.seesaa.net/article/73366651.html

【続きを読む】
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2008年12月22日

【リパブリカンFAQ 質問6】 IRAは「自爆」攻撃はしていませんよね。

【リパブリカンFAQ 回答6】
攻撃者が生還しないことを前提とした爆弾攻撃という意味では、1990年代初めに短期間だけですが、PIRAも「自爆」攻撃を行なっています。

「自爆」といっても、正確には、自爆の志願者に自爆させる(あるいは自爆を志願するように仕向ける)のではなく、死にたくない人に無理やり命を賭した攻撃をさせるという形です。英語ではproxy bomb(代理人による爆弾攻撃)と表されます。
http://en.wikipedia.org/wiki/Proxy_bomb

ウィキペディア英語版によると:

最初のプロクシ・ボム攻撃は、1990年にPIRAのアーミー・カウンシル(軍事評議会)に承認されました。英治安機関の人か英軍のシンパを「プロクシ」とし、その家族を人質にとり、当人に標的まで車爆弾を運転させるという計画です。そして1990年10月24日、武装して覆面をしたIRAメンバーが、英軍の基地で調理担当の仕事をしているパトリック・ギレスピーという男性(カトリック)の家族を人質にとりました。ギレスピーは1000ポンド(450キロ)の爆発物を積んだ車を運転させられ、アイルランドの南北のボーダーにある英軍の検問所へ。そして、車が検問所に到着したとき、遠隔操作で爆発物のスイッチが入れられ、ギレスピーは死亡、検問所にいた英兵5人も死亡しました。

この事件を報じるBBCのニュース:
http://www.youtube.com/watch?v=c66OvsRYmMA


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【リパブリカンFAQ 質問5】 「IRAのマニュアル」が公開されていると聞いたのですが本当ですか。

【リパブリカンFAQ 回答5】
はい。公開されています。いつ、誰が公開したのかは私は知りませんが、the Provisional IRA (いわゆる「IRA」) がメンバーに渡していた訓練マニュアル "The Green Book "が、ネットで誰でも閲覧できるようになっています。閲覧したい方は、ウィキペディア英語版のエントリの末尾、"Further Information/Sources" (External Links) からどうぞ。ウェブ検索の結果もつけておきます。ウィキペディアに記載されているURLがつながらない場合などはウェブ検索からどうぞ。

また、この「マニュアル」については、ウィキペディア英語版での説明も非常に詳細で丁寧です。注のつけかたもしっかりしています。

それと、このNI FAQブログで各記事のあとに表示されるようにしてある参考文献のひとつ、Tim Pat Cooganの "The IRA" でのこの「マニュアル」についての部分は、CAIN(アルスター大学)に抜粋掲載されていますので、本を買わなくても読むことができます。
http://cain.ulst.ac.uk/othelem/organ/docs/coogan/coogan93.htm

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2008年12月14日

【リパブリカンFAQ 質問4】 「共和主義シン・フェイン」とは。

【リパブリカンFAQ 回答4】
「共和主義シン・フェイン」は、「シン・フェイン」で日本語でウェブ検索すると上位に表示されると思いますが、「シン・フェイン」とは別の政治組織です。

【REP FAQ 1】の板書のような図で、the Provisional IRAの下に、「1986年、政治方針をめぐり分派」としてthe Continuity IRAの成立を説明しています。

このContinuity IRAの事実上の「政治ウィング」とされているのが「共和主義シン・フェイン (the Republican Sinn Fein: RSF)」です(RSFは公にこれを否定していますが)。英国では政党としては非合法ではありません(CIRAは非合法です)。一方で、1994年にProvisional IRAについての「テロ組織」指定を解除した米国は、CIRAとRSFについてはその指定を解除していません
As part of ongoing U.S. efforts against terrorism, the Secretary of State has designated the terrorist group Continuity Irish Republican Army, along with its aliases Continuity Army Council and Republican Sinn Fein, as a foreign terrorist organization under the Immigration and Nationality Act.


さて、【REP FAQ 1】では「1986年、政治方針をめぐり分派」と簡単に書いただけですが、PIRAからCIRAが、シン・フェインからRSFが分派する理由となったのは、「議会の拒否」すなわち「議会欠席主義 abstentionism」をめぐる根本的な対立です。

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2008年12月13日

【リパブリカンFAQ 質問3】 IRAと「レジスタンス」の違いは?

【リパブリカンFAQ 回答3】
※このエントリは、いただいた質問を元に書いています。

“「テロ」か「レジスタンス」か”という用語法が前提にあるものとして回答します。(「レジスタンス」というものを厳密に定義したいとかではなく。)

「IRA」の行動は、その「IRA」が1969年の分裂前であろうと、分裂後のOfficials, Provisionalsであろうと、さらに分派したINLA, Continuity IRA, Real IRAであろうと――これらを総称して「リパブリカン」(実態としての「武装主義のナショナリズム」を表す)と言いますが――、彼らの考え方に沿うならば、「レジスタンス」と呼ぶべきでしょう。(私自身は自分の文章として書くときは、「テロ」とも「レジスタンス」とも呼ばず、単にIRAの用語である「武装闘争 armed struggle」を使ったり、より中立的で具体的な「攻撃 attack」などを使ったりしますが。)

また、必ずしも彼らの考え方に沿っていなくても彼らの行動を「レジスタンス」と書いている例として、Globalsecurity.orgの記述を引きます。(太字強調は引用者による。)
http://www.globalsecurity.org/military/world/para/ira.htm
... the Provisional IRA was the largest of the three republican armed resistance groups.

The policies of Sinn fein under the leadership Gerry Adams from 1994 to 1998 led to a split in the Provisional Irish Republican Army during the fall of 1997, with one faction accepting the new Good Friday Agreement, and the New or Real IRA continuing armed resistance to British partition.


Globalsecurity.orgが、Provisional IRAとReal IRAについて、"armed resistance" という記述をしていることに意外な印象を受ける方が多いのではないかと思います。私も意外な印象を受けました。

Globalsecurity.orgは「中立」の立場での記述でしょうが、実際に英語サイトを対象に「IRA resistance」で検索すると、用語法をめぐる議論を回避するために形式的に両論併記したい場合に "IRA resistance/terrorists" などと表している例もなくはないですが、「リパブリカン」のスタンスの記述で "IRA resistance" と書かれている例が多く確認できます。

つまり、「北アイルランド紛争」の「終わり」を1998年ベルファスト合意とし、それまでの「紛争」におけるIRAの行動 (actions) が――すなわち「統一アイルランドのための武装闘争」が「紛争」の軍事的側面の中心であると位置付ける場合(こういう見方が主流なので何ももったいぶって書かなくてもいいんですが)、その「IRAの行動」は「テロリストのもの」なのか「レジスタンスのもの」なのか、どちらかひとつを選択せよ、ということになると、「どちらの呼び方をするかは政治的なスタンスによるものだ」としか言いようがありません。

むろん、英国側はIRAを「テロ組織 terrorist organisation」として「テロ法 the Terrorism Act」で「特定組織」にしています (→現行法ではthe Terrorism Act 2000のPart II参照。the Terrorism Act自体は2006年に改定されているが、「特定組織」の部分は、2006年の法でも2000年のものをそのまま参照している)。しかし、そのことが示す「事実」は、英国側の公的なスタンスがそれである、ということだけです。普遍的事実ではありません。この点について少し考えると、そもそも「普遍的にテロリスト」とかいうものがあるのかどうかという話になってしまうので、今は先に進みます。(「普遍的にテロリスト」なるものがあるのかどうかは、このサイト全体で、多分扱わないと思います。無料で公開するという前提で扱えると私が考えている範囲を軽く超えてしまうので。よって、この点についてのご質問などには応じられないと思います。)

IRAの活動が何なのか、という点については、IRAの考え(主義主張)のベースを知ることが前提になります。

前置きが長くなりましたが、以下が本論です。

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【リパブリカンFAQ 質問2】 IRAでウェブ検索すると……どういうことッスかこれは。

【リパブリカンFAQ 回答2】
IRA入会の案内のことですか。
日本支部と思われるグループのことですか。
米国支部の日本語資料と思われるもののことですか。
口座があるのに凍結されてもいないのではということですか。
投資として扱われているという恐ろしい現実のことですか。
関連が疑われる雑誌は、あまりにも多いということですか。
航空機はやばいんじゃないのという話ですか。
ラジオまであるらしい、頭が痛いゼ、ということですか。
「爆発」に快感を覚えるようになるかもしれない恐ろしいゲームのことですか。
新宿歌舞伎町にあるらしいアジトと思われるもののことですか。

※このエントリは、ネタです。

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2008年12月12日

【ロイヤリストFAQ 質問5】 ビリー・ライトという人物とその殺害について、もう少し詳しく。

【ロイヤリストFAQ 回答5】
LVFのリーダー、ビリー・ライトは、1997年12月27日、メイズ刑務所内で射殺されました。ビリー・ライトという人物については、殺害実行犯の1人が自殺した2007年6月の本館でのエントリ、「不都合な真実を知っているかもしれない男の都合のよいタイミングでの自殺」を参照……ってリンクを置いておいてもあんまりクリックされないようなので、以下に、このエントリからビリー・ライトについての部分を抜き出してコピペしておきます。2007年6月の記事だから、「最新」ではないのだけど。

※以下、本館からのコピペ(最後まで)


……ともあれ、ビリー・ライトというのがどういう人物だったのかを簡単に記しておこうと思う。

ビリー・ライトは1960年、イングランドのウルヴァーハンプトンに生まれたアイリッシュ・プロテスタントである。彼が物心つくまえに家族は北アイルランド、サウス・アーマーのナショナリストが多い地域に引っ越し、彼はそこで育った。両親はプロテスタントだったが過激なロイヤリストではなく、彼自身、子供の頃は近所の子たちと一緒にナショナリストのスポーツであるゲーリック・フットボールをして遊んだりしていたそうだ。(1960年代半ばごろまでは、「紛争」は「ごく一部の過激派のもの」でしかなかった。セクタリアン・ディヴァイドもまだそんなにきつくなかったのだ。)

しかし、1960年代半ばにプロテスタントによるカトリック襲撃事件などが多発するようになり、1969年にIRAがOfficialとProvisionalに分離し、PIRAの「武装闘争」が本格化して「紛争」が始まるといった時代のなかで、ビリー少年の「ロイヤリスト」としての方向も決定付けられていく。

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2008年12月11日

【ロイヤリストFAQ 質問4】 LVFって何ですか。

【ロイヤリストFAQ 回答4】
※以下は概説です。詳細については別の項目を立てます。

"LVF" は、the Loyalist Volunteer Forceのことです。日本語にすれば「ロイヤリスト義勇軍」となりますが、特に訳語で表されてはいないように思います。読み方は「エル・ヴィー・エフ」です。

LVFはUVFから分派した「ロイヤリストの超過激派」です。1994年10月にロイヤリスト武装組織が一斉に停戦 (ceasefire) したのですが、これに反対していた人々が独自の組織として立ち上げた組織です。(むろん、LVFは1998年のグッドフライデー合意にも反対しています。)

で、今は概略だけをざっと述べ、詳細はまたおいおいということにさせていただきたいのですが、LVFは1996年7月の「ドラムクリー紛争 Drumcree dispute」のときにカトリックの一般市民(タクシー運転手)を射殺し、その存在が知れ渡ったようです。1997年6月に英国で非合法テロ組織に指定されました。

リーダーは1960年生まれのビリー・ライトというミリタントで、UVFでの活動歴もいろいろとあったのですが、最終的には1997年3月に脅迫容疑で起訴されて有罪になり、懲役8年を宣告され、メイズ刑務所(ロング・ケッシュ:パラミリタリー専用の刑務所)に収監されます。メイズで彼は「LVFは他のロイヤリスト組織とは別の棟に入れろ」と要求、これが通って(一緒にしておくと大変なことになるという前提はあります)、LVF専用棟が用意されましたが、事件はここで起こります。


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2008年12月09日

「コメント投稿用専用エントリ」を作りました。他

予定より1週間ちょっと遅くなりましたが、コメント投稿が有効になるようにしました。といっても、各エントリのコメント欄を開放すると「何というカオス」になることは目に見えているので(今でも、私ひとりの頭の中とメモ書きだけでも充分にカオスなのです、実は)、下記URLを「コメント投稿専用エントリ」とし、ご指摘・ご質問はそこに一元的にご投稿していただくということで進めたいと思います。このほうが確実にご指摘を反映できますので。
http://nofrills-nifaq.seesaa.net/article/110930149.html

また、各エントリのトラックバックですが、コメント専用エントリの稼動にあわせてONにしました。(ただし、時事的な要素が絡むとspam, spam, spam, egg, bacon and spamな状態になることは本家で経験しちゃったりなんかしてるので、トラバの表示は承認制です。)

しばらくこの形でやってみて、不便なところがあればまた直す、ということで進めたいと思います。よろしくお付き合いください。
posted by nofrills at 01:30 | 事務的なご連絡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

※誤訳・誤記・誤変換などのご指摘やエントリの内容についてのご質問などは、
コメント投稿専用エントリのコメント欄にお寄せください。

【ご指摘、ご質問などはこのエントリのコメント欄にご投稿ください。】

このFAQを始めてしばらく経ちました。この感じでやっていこうと思うのですが、そうするとページ数(エントリ数)がものすごく多くなる上に、重複する話題が必ず出てくるので、すべてのエントリのコメント欄をオープンにすると収拾がつかない状態になりうるということは明らかです。

よって、コメントの投稿はそれ専用のエントリを設けて、そこにご投稿していただくようにしたほうがよいだろうと判断しました。

このエントリがコメント投稿専用のエントリです。

http://nofrills-nifaq.seesaa.net/ について、ご指摘やご質問がおありの場合は、下記の「例」のような形式で、このエントリにご投稿ください。
【続きを読む】
posted by nofrills at 01:00 | Comment(1) | ご質問など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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2008年12月08日

【ロイヤリストFAQ 質問3】 UVFは1966年結成ですか。もっと古いんじゃないですか。

【ロイヤリストFAQ 回答3】
「北アイルランド紛争」においてIRA (特にProvisional IRA)に次いで多くの人々を殺したロイヤリスト武装組織、UVF (the Ulster Volunteer Force) は、組織名は「昔のUVF」から取っていますが、組織としては別のものです。

「昔のUVF」とは、1912年に「アイルランド自治法 Home Rule」に反対して、エドワード・カーソンやジェイムズ・クレイグといったUUP (Ulster Unionist Party) の有力な政治家によって結成されたユニオニストの武装組織、the Ulster Volunteers(翌1913年にthe Ulster Volunteer Forceとして組織化)です。

現代のUVFは、この1910年代のUVFの「後継者」を自認していますが、組織としての直接の関係性はありません。ぶっちゃけ、「勝手に名乗っている」状態ととらえて問題はないと思います。

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【ロイヤリストFAQ 質問2】 UVFって何ですか。

【ロイヤリストFAQ 回答2】
※以下は概説です。詳細については別の項目を立てます。

"UVF" は、the Ulster Volunteer Force, 日本語で「アルスター義勇軍」のことです。読み方はアルファベットそのまま「ユー・ヴィー・エフ」です。

UVF Forever and Ulster組織の名称に「アルスター」が含まれていることからもわかるとおり、この組織は「ユニオニスト/ロイヤリスト」側の武装組織です。構成員は「プロテスタント」です。

組織の標語はFor God and Ulster, 「神とアルスターのために」。左図はベルファストにあるUVFのC Company, 1st Battalionの壁画で(元の写真、Creative Commons Attribution-ShareAlike 2.0 License, flickrユーザーのShiraz Chakeraさんによる)、覆面・黒の上下・白ベルトに武器(銃の種類は、見る人が見れば絵から特定できると思います。私には無理ですが)といういでたちの「義勇兵 volunteers」が守るようにして取り囲んでいるエンブレムの下半分に、この標語が書かれているのが確認できます。なお、紋章の中央にある「手」は「アルスター」のシンボルです。エンブレムの上に並んでいる5人は「戦死者」で、それぞれの肖像画に、"Vol. R. McIntyre" といったように――つまり「R. マッキンタイア義勇兵」といったように名が記されています。

UVFの始まりは1960年代後半です。ベルファスト西部のシャンキル・ロードのあたりや東ベルファストといった「プロテスタント」のコミュニティで人員が集まり、1916年のイースター蜂起から50年で「ナショナリスト」が蜂起を記念した1966年5月にIRA(当時はただの「IRA」、1969年に分派してProvisional IRAとOfficial IRA)に対し「宣戦布告」を行い、「カトリック」を標的とした攻撃を本格的に開始します。(実際にはこの当時のIRAはかなり弱体化していて、「敵」と見なせるほどの脅威だったのかどうか疑問もあるようですが。)

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【ロイヤリストFAQ 質問1】 UDAって何ですか。

【ロイヤリストFAQ 回答1】
※以下は概説です。詳細については別の項目を立てます。

"UDA" は、the Ulster Defence Association, 日本語で「アルスター防衛協会」のことです。彼らは武装活動においては the Ulster Freedom Fighters (UFF: 「アルスター自由の戦士団」) という名称を使っています。「紛争」の文脈では「UFFはUDAの同意語」と見なされ、報道などでは単に「UDA」といえばUDAとUFFを包括的に表します(「UDA/UFF」という表記もありますが)。読み方はアルファベットそのまま「ユー・ディー・エイ」、「ユー・エフ・エフ」です(「ユーダ」などとは言いません)。

UDA mural in Shankill, Belfast組織の名称に「アルスター」が含まれていることからもわかるとおり、この組織は「ユニオニスト/ロイヤリスト」側の武装組織です。構成員は「プロテスタント」です。

組織の標語はQuis Separabit, ラテン語で "Who will separate [us]?" という意味です。左図はベルファストにあるUDAの壁画の一部で(元の写真、Creative Commons Attribution-ShareAlike 2.5 License, en.wikipediaユーザーのAsterionさんによる)、「誰が(われわれを)分かつことがあろうか」というこの標語がはっきり確認できます。なお、紋章の中央にある「赤い手」は「アルスター」のシンボルです。

UDAの始まりは1971年9月です。それまで各地にあった「ユニオニスト/ロイヤリスト」の地域ごとの自警団をまとめるアンブレラ組織として発足しました。


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2008年12月06日

【リパブリカンFAQ 質問1】 IRAって簡単に言えば何ですか。

【リパブリカンFAQ 回答1】
"the IRA" は、the Irish Republican Armyの省略形です。英語でもアルファベットでそのまま「アイ・アール・エイ」と読みます(「イラ」などではなく)。

彼らが「何」なのか、という質問には、簡単に答えることはできません。以前「本館」で書いたもの(下記)はありますが、これをさらに簡単にするのは……難しいです。

2006年11月06日 いろいろな「IRA」〜IRBからReal IRAまでの概略
http://nofrills.seesaa.net/article/26857689.html

とりあえず、英語版ウィキペディアの "List of IRAs" に基づいて、版書みたいなのを書いてみましたので、それをご参照ください。



※もう少し書き足す予定。→書き足しました。犠牲者数について。


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2008年12月05日

【資料】北アイルランド紛争の年表について

「年表」で検索して来られる方がけっこう多いようなので書いておきます。

単に「北アイルランド紛争」の時期(1960年代から2000年代)に限定した年表で私が最も重宝しているのは、このブログの右サイドバーにもリンクしてありますが、英語版ウィキペディアの Chronology of the Northern Ireland Troubles:
http://en.wikipedia.org/wiki/
Chronology_of_the_Northern_Ireland_Troubles


それから、もう少し細かいのが見たいときには、アルスター大学紛争データベース(CAIN)の、Key Events of the Northern Ireland Conflict:
http://cain.ulst.ac.uk/events/index.html

もっと細かいのが見たいときには、CAINの A Chronology of the Conflict - 1968 to the Present:
http://cain.ulst.ac.uk/othelem/chron.htm
※ここは、毎日事態が動いていたときのことをざっと調べるには最強です。例としては1972年7月などをご参照ください。



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【質問25】 北アイルランド紛争は宗教紛争ですか。

【回答25】
この点については、そのうちまた書くかもしれませんが、当座は【質問24】をご参照ください。
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【質問24】 「プロテスタント系住民」とは。「カトリック系住民」とは。

【回答24】
これまた大雑把な説明ですが、北アイルランドの「プロテスタント」は、17世紀のアルスター入植でスコットランドから移住した人たち(つまり「スコットランド系アイルランド人」)が多く、宗派としてはプレスビテリアン(長老派。つまりカルヴァン派)が多い。この点については、Church of Scotland (the Kirk) の概略なども参照してください。

一方「カトリック」は元々住んでいた人たち、つまり「アイルランド人」です。

わざわざ書くまでもないことですが、「プロテスタント」は16世紀の「宗教改革」によってできたもので、それ以前は「カトリック」しかありませんでした。(「カトリックしかなかった」とはいえ、正確には、カタリ派などもあったし、そのような「異端」がなければスペインの異端審問もなかったのですが。)

そして、イングランドでは「宗教改革」で成立した「イングランド国教会 Church of England」が――これは「教会の首長」が「国王」である、という宗派です――あり、それとは別に、カルヴァン派のような大陸的な意味でのプロテスタントがあり、そのいずれもが「プロテスタント」と呼ばれます。

そして――説明が下手なのでどんどんややこしくなるのですがご容赦を――、16世紀とか17世紀とか、イングランドおよびブリテンが激動の時代だったころ、アイルランドはその植民地支配を受けており(←これもまた単純化した説明ですが)、「元々住んでいたアイルランド人=カトリック」、「ブリテンからの入植者=プロテスタント」(国教会であれ、プレスビテリアンであれ)という大まかな構図になっていました。

【続きを読む】
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【質問23】 北アイルランド紛争の基本的な構図は。

【回答23】
【質問22】に述べた通り、実際には「何というカオス」と言うべき状況ですが、この項では図式的に、単純化して書きます。

■1960年代後半(「紛争」が始まりかけのころ):
「プロテスタント」(その多数がユニオニスト)のコミュニティ(武装組織としてUVFなど。警察もほとんどがプロテスタント)
    対
「カトリック」(その多数がナショナリスト)のコミュニティ(武装組織としてIRA ※1969年の分裂前)

■1969年8月の英軍介入から(「紛争」の時期):
「プロテスタント」のコミュニティ&「英軍」などの英治安当局
    対
「カトリック」のコミュニティ

ここまで単純化するのもどうかなあ、というくらいに単純化すると、上記のようになります。まずはこの構図を把握することが出発点です。

そして、外部の者としては、「プロテスタント」と「カトリック」という区分けは、こういった「単純化した構図」においてのみ使うべき区分けだと私は考えています。

その点については次の項で。
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【質問22】 北アイルランド紛争の当事者となった武装組織はいくつありますか。

【回答22】
【質問21】で少し述べましたが、誰かを殺した/死なせたものに限定しても、当事者となった武装組織は25を軽く超えています。
(RUC), (USC), (REP), (LOY), (BA), (UVF), (SE), (IRA), (nk), (OIRA), (UDA), (UFF), (INLA), (RHC), (UDR), (RAF), (PAF), (PAG), (PLA), (IA), (RepAF), (PRA), (CRF), (IPLO), (GS), (LRDG), (IPLOBB), (DAAD), (BP), (LVF), (rIRA), (RHD)

※これらの略語の中には「どれとは特定できないロイヤリストの組織」(=LOY)とか、「不明」(=nk)といったものも含まれていますので、それらを除外して25以上。私も数えるのいやです。

この「アルファベット・スープ」をある程度把握しておかないと、「北アイルランド紛争」について調べたり知ったりすることは、大変難しいです。その点については、また改めて……。

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【質問21】 北アイルランド紛争の犠牲者数は。犠牲者について調べる方法は。

【回答21】
最も確実な資料であるアルスター大学のCAINデータベース内にあるSutton Index of Deathsによると、北アイルランド紛争で命を奪われた人は、3,524人。(ただし期間は、1969年7月14日から、2001年12月31日とする。)
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/tables/Organisation_Summary.html

大まかな内訳は下記の通りです:
リパブリカン武装組織が殺した...2,056人
ロイヤリスト武装組織が殺した...1,020人
治安当局が殺した...367人
  -英治安当局...362
  -アイルランド共和国治安当局...5
不明...81人

http://cain.ulst.ac.uk/sutton/ では、犠牲者について、より細かく見ることができます。以下にこのデータベースの見方を簡単に説明します。

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2008年11月27日

【質問20】 北アイルランド紛争はいつ「終わった」のですか。(軍事面について)

【回答20】
軍事面では、「紛争」の終結は1997年の停戦 (ceasefire) が大きな節目でしたが、まずはそれに至る段階について少し。

参照先:
http://en.wikipedia.org/wiki/
Chronology_of_the_Northern_Ireland_Troubles


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【質問19】 北アイルランド紛争はいつ「終わった」のですか。(政治面について)

【回答19】
「紛争」の終結時期については、政治面についての話なのか、軍事面についての話なのかに分けます。長くなるので。

政治的には1998年4月のベルファスト合意(別名「グッドフライデー合意」、以下「GFA」)を大きな節目とするのが一般的です。

ただGFAは「大きな節目」ではありましたが、結果的にはこれだけですべてが終わったというわけではなく、最終的に政治の面で決着がついたといえるのは2006年10月のセント・アンドリューズ合意です。この合意で「北アイルランド自治政府」がまともに機能しうるものとして復活した(2007年5月)ということで。(「機能しうる」は「機能する」と同義ではありませんが。)

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【質問18】 北アイルランド紛争は今も続いているのですか。

【回答18】
形式としては、完全に終わっています。(社会的側面、特にメンタリティの面では、終わっているとは言えないと思いますが。)

現在でもリパブリカンの武装闘争至上主義者のような人たち(非・反主流派リパブリカン dissident Republicans)が活動を続けてはいますが、現状としては、彼らの活動は「紛争」と呼ぶべき規模ではありません。

詳細は次の項で。

非主流派リパブリカンの動きについては、本館のNIカテで書いています。(相当きなくさいことはきなくさいのですが。)
http://nofrills.seesaa.net/category/1773838-1.html

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【質問17】 北アイルランド紛争はいつ「始まった」のですか。

【回答17】
誰もが一致する見解は存在しないながら、一般的には、1968年10月のデリーでの公民権要求デモ(「カトリック」のコミュニティを中心とした動き)、もしくは1969年8月の「ボグサイドの戦い」(「カトリック」のコミュニティでの動き)と英軍の派遣(オペレーション・バナーの開始。英国の介入)が、「北アイルランド紛争の始まり」とされるようです。

NI紛争について最も信頼性の高いアルスター大学のCAINプロジェクトも、そのように扱っています。
http://cain.ulst.ac.uk/faq/faq2.htm#when
http://cain.ulst.ac.uk/othelem/chron/ch68.htm

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2008年11月26日

【お知らせ】iLikeのプレイヤーをつけました。

▼下記、設定によってはIEで閲覧できないという不具合を発生させているようですので(たぶんCookie関連?)、いったんプレイリストの埋め込みを削除しました。当方で現象が確認でき、対処が完了するまでの間に閲覧できなかった皆さま、ご迷惑をおかけしました。(Thanks to: 消印所沢さん)▼

ページ上部、記事が表示されるエリアの上に、iLikeplaylist作成機能を利用して、北アイルランドの音楽を数曲集めたプレイリストをつけました。

基本的には、主題歌として挙げた曲プラスアルファ、です。

北アイルランドというと「紛争」というイメージばかり、という人にこそ聞いていただきたい音です。

リストは2種類に分けました。

▼この下には、IEでは設定によって閲覧を妨げる可能性のある部分があります。Firefoxでは大丈夫なはずです(私が確認したところ。AdBlockをOnにしてても大丈夫なはず)。▼

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タグ:音楽
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【質問16】 「北アイルランド紛争」の英語での呼称について。

【回答16】
「北アイルランド紛争」は、英語では次のように呼ばれます。

※"Northern Irish" がついているものの検索結果の件数が少ないのは、"Northern Irish" という言い方自体が比較的新しいものだからではないかと思います。

私はこの8年くらい「北アイルランド紛争」について英語でネットで読んだりしているのですが、最も「普通」に馴染んでいるのは、"the Troubles" です (「北アイルランド紛争」は、自分で話したり書いたりするときは、"the Troubles in Northern Ireland" と自然に出てきます)。

この用語法については、アルスター大学CAINデータベースのFAQが明解な説明をしています。

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【質問15】 「北アイルランド紛争」はどういうものと定義されるのですか。

【回答15】
北アイルランド紛争 (the Northern Ireland Conflict, the Troubles) の定義として一般的なものを、英語版ウィキペディアから。

http://en.wikipedia.org/wiki/The_Troubles
The Troubles was a period of conflict involving republican and loyalist paramilitary organisations, political activist and civil rights groups, the Royal Ulster Constabulary (RUC), the British Army and others in Northern Ireland. The period is conventionally held to have lasted from the late 1960s until the conclusion of the peace process in the late 1990s, which culminated in the Belfast Agreement of 10 April 1998. ...

The Troubles have been variously described as terrorism, ethnic conflict, a many-sided conflict, a guerrilla war, a low intensity conflict, and even a civil war.

「北アイルランド紛争」は、リパブリカンの武装組織、ロイヤリストの武装組織、政治活動家、市民権運動のグループ、北アイルランド警察(RUC)、英軍などが関わった紛争の時期をいう。通例、1960年代終わりから1990年代終わりの和平プロセスの決着(1998年4月10日のベルファスト合意)まで続いたものとされる。……

「北アイルランド紛争」については、テロリズムであるとか、民族紛争であるとか、多面的紛争であるとか、ゲリラ戦争であるとか、低強度紛争(政治的対立の激しいもの)であるとか、内戦であるとか言われている。

※ここに出てくる「用語」の類は、「用語解説」のタグをつけた記事でご確認ください。

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【本日放送】BS世界のドキュメンタリー「憎しみを越えられるか 〜北アイルランド紛争・対話の旅〜」

今夜放送です。

BS世界のドキュメンタリー
<シリーズ 和解への模索>
憎しみを越えられるか 〜北アイルランド紛争・対話の旅〜
11月26日 水曜 午後9:10〜10:00
NHK BS1
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/081126.html

激しく衝突した北アイルランド紛争。30年にわたる相互テロの応酬で3600人以上が亡くなった。10年前の停戦合意を受けてテロは沈静化したが、双方に残した傷跡はいまだ癒えておらず、日常的な傷害事件や暴動は頻発している。都市ベルファストではいまだ、敵対する地区に足を踏み入れたことのない人がほとんどだ。

憎しみや暴力の連鎖は、どうしたら食い止めることが出来るのか。その答えを探るべく、一つの試みが注目を集めている。敵対する武装組織メンバー、テロの加害者、被害者が集まって、共にアイルランドやスコットランドなどを旅して対話を重ねるプロジェクトが2001年から毎年続けられている。

主催したのはNGOの「グレンクリー」。これまでに7回の対話の旅が行われ、約70人が参加した。参加者はこの旅を通じて、過去の憎しみやわだかまりを克服したいと切実に考えている人たちだ。「争いから離れた自然の中では、対立した者同士が胸にしまい込んだ思いを打ち明け始める」

番組では今年、新たなメンバーで行われる旅に同行取材する。加害被害を問わず紛争によって傷ついた人々は、その傷をどのようにいやそうとしているのか、旅の過程で彼らの何が変わってゆくのか。いまだ紛争の後遺症に悩み、それを乗り越えようともがく人々の現実を見つめる。

原題: 憎しみを越えられるか 〜北アイルランド紛争・対話の旅〜
制作: NHK / NHK情報ネットワーク / 千代田ラフト(日本) 2008年


「グレンクリー」は、グレンクリー平和和解センター Glencree Centre for Peace and Reconciliationのことだと思います。アイルランド共和国大使館の「過去のイベント」(下記)など参照。
http://www.ie.emb-japan.go.jp/The%2050th%20Events%20Page%20Nihongo.htm

BS世界のドキュメンタリーの<シリーズ 和解への模索>では、金曜日にも英国・北アイルランド関連の番組があります。ブレア政権の前にNI和平に取り組んだマイケル・アンクラム関連。


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【質問14】 北アイルランドにおける「リパブリカン」、「リパブリカニズム」とは何ですか。

【回答14】
「リパブリカン republican」は、字義通りには「共和主義者」で、実際に北アイルランドの「リパブリカニズム republicanism」が「共和主義」という日本語に翻訳されている場合も多いのですが、これもまた著しくミスリーディングであると思います。

北アイルランド紛争の文脈では、「リパブリカニズム」とはmilitant (Irish) nationalism, つまり「好戦的ナショナリズム」のことです。

「ロイヤリスト」が「ユニオニストの過激派」であるのと同様に、「リパブリカン」は「ナショナリストの過激派」です。

CAINの「用語集」を参照しておきましょう。

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【質問13】 北アイルランドにおける「ナショナリスト」、「ナショナリズム」とは何ですか。

【回答13】
よぉし、説明するぞ!と思って英語版ウィキペディアを見たら、ものすごいことになっていて、説明に挫折しました。こりゃ「概説 アイルランドの近代史」ですがな……。
http://en.wikipedia.org/wiki/Irish_nationalism

CAINに行きます。CAINの「用語集」での定義は:
In Northern Ireland the term is used to describe those who hold a long-term wish for the reunification of Ireland. The majority of those people who are from the Catholic community are Nationalist. It should be noted that not all Nationalists support Republican groups.

北アイルランドにおいては、「ナショナリスト」という用語は、アイルランドの再統一を願っている人々をいう。カトリックのコミュニティ出身の人たちの多数は「ナショナリスト」である。ただし、すべての「ナショナリスト」が「リパブリカン」の各集団を支持しているわけではない。

http://cain.ulst.ac.uk/othelem/glossary.htm#N


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