「共和主義シン・フェイン」は、「シン・フェイン」で日本語でウェブ検索すると上位に表示されると思いますが、「シン・フェイン」とは別の政治組織です。
【REP FAQ 1】の板書のような図で、the Provisional IRAの下に、「1986年、政治方針をめぐり分派」としてthe Continuity IRAの成立を説明しています。
このContinuity IRAの事実上の「政治ウィング」とされているのが「共和主義シン・フェイン (the Republican Sinn Fein: RSF)」です(RSFは公にこれを否定していますが)。英国では政党としては非合法ではありません(CIRAは非合法です)。一方で、1994年にProvisional IRAについての「テロ組織」指定を解除した米国は、CIRAとRSFについてはその指定を解除していません。
As part of ongoing U.S. efforts against terrorism, the Secretary of State has designated the terrorist group Continuity Irish Republican Army, along with its aliases Continuity Army Council and Republican Sinn Fein, as a foreign terrorist organization under the Immigration and Nationality Act.
さて、【REP FAQ 1】では「1986年、政治方針をめぐり分派」と簡単に書いただけですが、PIRAからCIRAが、シン・フェインからRSFが分派する理由となったのは、「議会の拒否」すなわち「議会欠席主義 abstentionism」をめぐる根本的な対立です。
「議会欠席主義」についての大まかな説明は【REP FAQ 3】に書いてあります。
、「(今地図にある)アイルランド共和国」と「北アイルランド」の権威を認めることを拒否し――具体的にはアイルランド共和国と英国の議会を否定し(これが「議会欠席 abstentionism」という理念・行動のバックボーンです。それらの議会を「正当な国会」とは認めない、ということです)……
シン・フェインは、1980年代から一部については既存の議会の正当性を認めるようになり、「欠席主義」を取りやめましたが(これがジェリー・アダムズの「アーマライトと投票箱の戦略 the Armalite and ballot box strategy」です)、ここで意見が対立し、「頑として1916年共和国宣言を実現する」という人たちがProvisional IRAとシン・フェインを離脱し、Continuity IRAと「共和主義シン・フェイン RSF: the Republican Sinn Fein」を結成しました。これが1986年のことです。RSFは今もなお徹底的な議会欠席主義を貫いて、シン・フェインとジェリー・アダムズを厳しく非難しています。(わかりやすく言えば「彼らは妥協した」という非難です。)
「共和主義シン・フェイン」については、資料が90年代に日本語化されたものがウェブ上にアーカイヴされています。(更新は止まっていますし、この文書についての問い合わせも翻訳した人は受け付けていません。)これが「シン・フェイン」を検索したときに上位に表示されます。
http://hanran.tripod.com/irish/rsf/index.html
【→2014年6月追記: このサイトが使っていたアクセス解析がサービスを終了したせいで、サイトがリダイレクトされてしまい閲覧できなくなっています。とりあえず、JavaScriptを切って閲覧してください。詳細後述】
単に翻訳の作業結果として、大変な力作です。
ただしこの資料は、「共和主義シン・フェイン」と「シン・フェイン」の区別がつかない人にはお勧めしません。両者の区別がついてからご参照ください。
両者の区別をつけても、RSFとSFはどこが違うんだという疑問は出てくると思いますが(例えば、RSFはジェイムズ・コノリーを讃えていますが、ではSFはコノリーを低く見ているのかというと、そういうことはありません)、「北アイルランド紛争」について、また「北アイルランド」について、「アイルランド」について語る以上、両者は「別の派閥」ではなく「別の組織」と見なさなければなりません。ちょっと違いますが、パレスチナのファタハとハマスを「別の派閥」とは見なさないのと同様に。また、アルカイダとタリバンのような関係でもありません。むしろ、RSFとSFは対立しています。協力関係にはありません。
こういったことが、2000年代以降、特に2005年以降の「非主流派リパブリカン」の活動の活発化を見る上では非常に重要なポイントとなります。
参照先:
http://en.wikipedia.org/wiki/Republican_Sinn_F%C3%A9in
http://cain.ulst.ac.uk/othelem/organ/rorgan.htm#rsf
追記@2009年3月14日:
2009年3月9日(月曜日)、北アイルランドのアーマー州クレイガヴォンで、警官が射殺されました。
http://nofrills.seesaa.net/article/115410905.html
この事件について、Continuity IRAが犯行声明を出しました。
http://nofrills.seesaa.net/article/115436467.html
警官射殺事件の2日前の土曜日、アントリムの英軍基地が襲撃され、英軍兵士2人が射殺され、別の兵士2人とピザ配達人2人が負傷しました。これはReal IRAが犯行声明を出しています。
http://nofrills.seesaa.net/article/115346246.html
http://nofrills.seesaa.net/article/115354564.html
この2つの事件の間にはさまっていた日曜日、RSFの声明が出ていたことが報告されています。
http://nofrills.seesaa.net/article/115581598.html
土曜日の軍基地襲撃ではRIRAが犯行声明を出した。そして月曜日の警官射殺では、CIRAが犯行声明を出しているのだが、その前の日曜日(軍基地襲撃の翌日)には既に、CIRAの政治部門(と考えて支障のないもの)であるRSF (Republican Sinn Fein: 共和主義シン・フェイン)が、リパブリカンの掲示板に投稿している、ということを、Slugger O'Tooleのマーク・マクレガーさんが報告していた。それもリーダー自身の署名のあるステートメントだ (Statement from Ruairí Ó Brádaigh, President, Republican Sinn Féin)。
Sunday, March 08, 2009
RSF statement
http://sluggerotoole.com/index.php/weblog/comments/rsf-statement/
RSFのステートメントの内容は、「英国政府と英国の占領軍がアイルランドに残留する限りは、アイルランド人はそれに反対し続ける」といういつものあれ(「英国」や「占領」について定義が独自すぎるプロパガンダ)と、「北アイルランド警察がアンダーカバーの英軍兵士をこの国に再び導入すると宣言した」(→3月6日のエントリを参照)ことで「数日の問題となった It is only a matter of days」のだと述べ、「人が死ねば誰しもが悔やむが、アイルランドの厳しい現実には直面しなければならない」と結ぶ、いうものだ。(意味がよくわからないのは私も同じですので質問しないでください。)
※このステートメントが掲載されていた掲示板のURLは、Sluggerの段階で、伏せられている。賢明な判断だ。
それから、ウィキペディア英語版の「ジェリー・アダムズ」の項に、RSFについて非常にわかりやすい記述があったので(なぜか)、それを引用しておきます。(日本語化したものはGNU Free Documentation Licenseでご利用いただいて構いません。)
http://en.wikipedia.org/wiki/Gerry_Adams#President_of_Sinn_F.C3.A9in
Republicans had long claimed that the only legitimate Irish state was the Irish Republic declared in the Proclamation of the Republic of 1916, which they considered to be still in existence. In their view, the legitimate government was the IRA Army Council, which had been vested with the authority of that Republic in 1938 (prior to the Second World War) by the last remaining anti-Treaty deputies of the Second Dáil. Adams continued to adhere to this claim of republican political legitimacy until quite recently - however in his 2005 speech to the Sinn Féin Ard Fheis he explicitly rejected it.
As a result of this non-recognition, Sinn Féin had abstained from taking any of the seats they won in the British or Irish parliaments. At its 1986 Ard Fheis, Sinn Féin delegates passed a resolution to amend the rules and constitution that would allow its members to sit in the Dublin parliament (Leinster House/Dáil Éireann). At this Ruairí Ó Brádaigh led a small walkout, just as he and Sean Mac Stiofain had done sixteen years earlier with the creation of Provisional Sinn Féin. This minority, which rejected dropping the policy of abstentionism, now nominally distinguishes itself from Provisional Sinn Féin by using the name Republican Sinn Féin (or Sinn Féin Poblachtach), and maintains that they are the true Sinn Féin republicans.
リパブリカンは、唯一の正当なアイルランド国家は、1916年の「共和国宣言」で宣言されたアイルランド共和国だけであり、それはまだ存在している、と長く主張してきた。リパブリカンの考えでは、正当な政府は、1938年に(第二次大戦に先立って)、最後まで残っていた反条約派(1921年のアングロ・アイリッシュ条約に反対して内戦を戦ったIRAの人々)のSecond Dail(アイルランド国会)の議員たちから権限を与えられたIRAのアーミー・カウンシル(軍事評議会)ということになる。ジェリー・アダムズは、リパブリカンに政治的な正当性があるというこの主張をかなり最近まで保持し続けてきたが、2005年のシン・フェイン党大会では、はっきりと否定している。
このように(現在の、26州から成るアイルランド共和国という形でのアイルランド国家の正当性を、また北アイルランドが英国の一部であるから北アイルランドから英国の国会議員を出すということを)認めないことの結果として、シン・フェインは、英国とアイルランドの国会で議席を勝ち取っても、一切出席してこなかった。(しかし)1986年の党大会で、シン・フェインの代表団は党規約を修正し、シン・フェイン党員がダブリンの国会(アイルランドの国会)に出席することを可能とする決議を採択した。このときにライリー・オブラディら少人数の退席者が出た。それはちょうど、その16年前にオブラディとショーン・マックシュトイファンが退席して、シン・フェイン暫定派(注:通例「シン・フェイン」と呼ぶ組織)が結成されたのと同様であった。議会出席拒否のポリシーの破棄に反対したオブラディらの少数者は、現在では「共和主義シン・フェイン」という名称を使うことによって、自分たちを、シン・フェイン暫定派とは区別している。彼ら共和主義シン・フェインは、自分たちこそが真のシン・フェインのリパブリカンであると主張している。
【2014年6月9日アップデート】
ちょっと用があったので、上でリンクしてある
http://hanran.tripod.com/irish/rsf/index.html
にアクセスしたら、意味不明の(ほとんど空の)ページにリダイレクトされてしまい、ページを閲覧できません。
サイトが削除されてしまったのかとarchive.orgにURLを投げてみても、archive.orgの中でリダイレクトされてしまいます。さらに「サイトはまだ生きているから閲覧できますよ」的なメッセージが表示されます。確かに、tripod.comは(geocities.comとは異なり)まだサービス停止していないのですが、いずれにせよ閲覧ができないのは困ったことです。
リダイレクト先のURLがUltraRanking.comというものなので、それについて検索してみたら……ああ、こういうことですか。
2013/08/29 UltraRankingに勝手にジャンプする件、対策とか簡易まとめ
http://titan.cocolog-nifty.com/pctyperose/2013/08/ultraranking-91.html
Q.いつからこうなったの?
A.自分が発見したのは、2013年8月27日。whois情報から推測すると、2013年8月17日以後から。
Q.原因は何?
A.推測入ってますけども・・・
昔々、UltraRankingというアクセス解析サービスがありました。
2011年ぐらいまではサービスは正常でした。
その後サービスが終了し、ultraranking.comのドメインが手放された後、
そのドメインを取得したどっかの広告会社が、
UltraRankingの解析タグを使ったページのアクセスを、
広告ページに強制誘導する仕込みをした結果……
※何が起きたのかは同じブログの1つ前の記事にも詳しく書かれています。
これは、hanran.tripod.comの管理人さん(というかもう誰も「管理」してないよね。。。)がこの問題を引き起こすタグを削除してくれないと、どうしようもないです。
このリダイレクトはJavaScriptを無効にすれば起こらないので、ページを閲覧したい場合は、閲覧者が自分でJavaScriptを切るように対処してください。また、Firefoxの場合はクロスサイト・リクエストを制御するRequestPolicyというアドオンを入れれば解決しますが、これ入れるとほかの閲覧が一手間余分にかかるようになります(最初だけ、ですけどね)。
あるいは、ultraranking.com 自体をドメインごとアクセス不許可にするとかでも。
私が確認したところ、hanran.tripod.comのサイトは、JavaScriptを切ったら普通に閲覧できています。
※このように表示されるはずです。(indexのページと、最初の2件のリンク先。画像クリックで原寸)


