「北アイルランド紛争」においてIRA (特にProvisional IRA)に次いで多くの人々を殺したロイヤリスト武装組織、UVF (the Ulster Volunteer Force) は、組織名は「昔のUVF」から取っていますが、組織としては別のものです。
「昔のUVF」とは、1912年に「アイルランド自治法 Home Rule」に反対して、エドワード・カーソンやジェイムズ・クレイグといったUUP (Ulster Unionist Party) の有力な政治家によって結成されたユニオニストの武装組織、the Ulster Volunteers(翌1913年にthe Ulster Volunteer Forceとして組織化)です。
現代のUVFは、この1910年代のUVFの「後継者」を自認していますが、組織としての直接の関係性はありません。ぶっちゃけ、「勝手に名乗っている」状態ととらえて問題はないと思います。
ちなみに、昔のUVFは英保守党の支持を受けていましたが(「Home Ruleに反対」がUUPと保守党の共通項です。ちなみに当時の英国は保守党と自由党の二大政党制、労働党はまだ今のような位置にはありません)、現代のUVFはそうではありません。また、昔のUVFは第一次世界大戦で多くが英軍に従軍し(ソンムの戦いで何万人も戦死)、それに続く1921年のアイルランド分断(「北アイルランド」の成立)以後の「英国の一部としての北アイルランド」という存在の中で、「民兵組織」としてはフェードアウトしています。
なお、IRAについても「アイルランド独立戦争時のIRAという組織名を勝手に名乗っている」と考えられればわりとすっきりするのですが、IRAは組織としての連続性がないわけではないので、UVFよりもさらにややこしいです。特に日本語では「アイルランド共和軍」とか「アイルランド共和国軍」とかいった「翻訳」がなされているので、よけいにわかりづらくなっているように思われます。