最も確実な資料であるアルスター大学のCAINデータベース内にあるSutton Index of Deathsによると、北アイルランド紛争で命を奪われた人は、3,524人。(ただし期間は、1969年7月14日から、2001年12月31日とする。)
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/tables/Organisation_Summary.html
大まかな内訳は下記の通りです:
リパブリカン武装組織が殺した...2,056人
ロイヤリスト武装組織が殺した...1,020人
治安当局が殺した...367人
-英治安当局...362
-アイルランド共和国治安当局...5
不明...81人
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/ では、犠牲者について、より細かく見ることができます。以下にこのデータベースの見方を簡単に説明します。
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/ のページを少しスクロールダウンすると、Details of those killed という見出しがあります。この下に下記のリストがあります。
a chronological listing of deaths (years 1969 to 2001)
年別、死者リスト(1969年から2001年)
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/chron/index.html
an alphabetical listing of deaths (surnames A to Y)
アルファベット順、死者名簿(姓でAからYまで)
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/alpha/index.html
a search page (name search, date search, and text / key word search)
検索ページ(名前での検索、死亡の日付での検索、テキスト/キーワード検索)
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/search.html
※名前での検索は、surname(姓)が必須です。
an appendix listing sudden deaths due to a heart problem during by an incident related to the conflict
付録として、紛争に関連する出来事で心臓発作を起こして死亡した事例のリスト
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/heart.html
各ページで、死亡の日付、死者名、年齢、属性(→詳細はページ末を参照)、所属、誰の行為で死亡したか、死亡の状況の詳細(場所など)が、表形式で表示されます。
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/chron/1972.html を例に、どれが何なのかを簡単に説明した図が下記です。(「アルファベット順」などで見たときに出力される表は、項目の順番がこれとは違いますが、内容は同じです。)

ページ末には、表で用いられている略語などの一覧があります。nfNI = not from Northern Ireland, Civ = civillianといった省略形のほか、RUC, UDR, UDA, UVF, RHC, IRA, INLA, etc etcの、「北アイルランドのアルファベット略語」もあります。
また、http://cain.ulst.ac.uk/sutton/index.html で Details of those killed の下に、Statistical tables のページのリストがあります。おそらく調べものにはこちらがより有用なのではないかと思います。
basic tabulations (tables) of each variable
各変数ごとの基本的な表
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/tables/index.html
※変数は、「性別」、「年齢」、「宗派」、「所属組織」などです。
crosstabulations (two-way tables) of key variables
重要な変数のクロス集計の表
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/crosstabs.html
※「Age Summary 年齢層」、「Gender 性別」、「Religion Summary 宗派」、「Status Summary 属性」、「Status 属性(詳細)」、「Organisation Summary 所属組織」、「Organisation 所属組織(詳細)」、「Location 場所」、「Year 年」によるクロス集計です。
「詳細」でやるとものすごいことになりますが、よほど突っ込んだ調べものでない限りは必要ではないと思います。例えば:
Organisation Summaryは、British Security (英治安当局)、Republican Paramilitary (リパブリカン武装組織)、Loyalist Paramilitary (ロイヤリスト武装組織)、not known (不明)、Irish Security (アイルランド共和国治安当局) で表されます。
Organisationだけだと、(RUC), (USC), (REP), (LOY), (BA), (UVF), (SE), (IRA), (nk), (OIRA), (UDA), (UFF), (INLA), (RHC), (UDR), (RAF), (PAF), (PAG), (PLA), (IA), (RepAF), (PRA), (CRF), (IPLO), (GS), (LRDG), (IPLOBB), (DAAD), (BP), (LVF), (rIRA), (RHD) と出てきます(この状態は「アルファベット・スープ」と言います)。これらの略語が頭に入っていないと無用の長物です。
Statusも似たような感じで、Status Summaryだと、Civilian (一般市民)、British Security (英治安当局)、Republican Paramilitary (リパブリカン武装組織)、Loyalist Paramilitary (ロイヤリスト武装組織)、Irish Security (アイルランド共和国治安当局) と大変すっきりしていますが、Statusで見ちゃうと「アルファベット・スープ」です。
selection of a subset of the information and crosstabulation of two variables
http://cain.ulst.ac.uk/sutton/selecttabs.html
これをお使いになる方はこんな基本的なFAQはご覧になっていないと思うので説明は省略します。地域を指定したクロス集計など、非常に細かいことができます。
なお、Suttonのデータベースは2001年末で一区切りになっていて、2002年以降は別の扱いとなっています。これらについては、http://cain.ulst.ac.uk/sutton/index.html で、Draft List of Deaths Related to the Conflict, 2002- を参照してください。2002年以降のリストは、「紛争」に関連するもの(UDAの内紛など、組織内の暴力もこちらにカテゴライズ)と、「紛争」に関連していると断定はできないがその可能性はあるものとに大別され、それぞれ、2001年までのリストと同様の情報がまとめられています。でも年代が新しいものは捜査や裁判が進行中だったりするので、これで確定というわけではありません。