誰もが一致する見解は存在しないながら、一般的には、1968年10月のデリーでの公民権要求デモ(「カトリック」のコミュニティを中心とした動き)、もしくは1969年8月の「ボグサイドの戦い」(「カトリック」のコミュニティでの動き)と英軍の派遣(オペレーション・バナーの開始。英国の介入)が、「北アイルランド紛争の始まり」とされるようです。
NI紛争について最も信頼性の高いアルスター大学のCAINプロジェクトも、そのように扱っています。
http://cain.ulst.ac.uk/faq/faq2.htm#when
http://cain.ulst.ac.uk/othelem/chron/ch68.htm
ただしこれら「カトリック」の間での動きが大きくなる前、1966年に「プロテスタント」の間でUVF (the Ulster Volunteer Force) が結成されたことを「紛争の始まり」とする見方もあるし、源流は1950年代にさかのぼるとする見方もあるし、「いやいや1921年の南北分断 (Partition) がそもそもの始まりだ」とか、「それを言うなら12世紀以来の植民地支配が」とか、これだけで2泊3日くらい合宿できるかもしれないというくらいに考え方がいろいろあります。
(つまり、悪いことはいわないから、「始まり」は1968年10月か、1969年8月にしておいたほうがいいよ、ということです。それ以前にさかのぼるとしたら1966年が限界だと思います。うっかりその前までさかのぼると、「歴史的な組織の名称を名乗る組織」のドツボにはまるし――おっと、筆が滑った、書きすぎた――、特に対米プロパガンダがものすごかったしで、あれこれ断片的に知識を仕入れているだけだと、とんでもなく混乱します。少し前に本館で言及した「UVFは保守党系列」ってのはたぶんそういう混乱によるものだと思います。現代のUVFは英保守党の「系列」ではありません。)
なお、私は「1969年8月」の「英軍の介入開始」を「紛争の始まり」と位置付けて、ようやく時系列でいろいろなことが把握できました。IRAから入ったら面倒な回り道をしたという感じです。(まあ、当時は北アイルランドについては「IRAのテロ」しか知らなかったからなんだけれども。)