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2008年11月26日

【質問16】 「北アイルランド紛争」の英語での呼称について。

【回答16】
「北アイルランド紛争」は、英語では次のように呼ばれます。

※"Northern Irish" がついているものの検索結果の件数が少ないのは、"Northern Irish" という言い方自体が比較的新しいものだからではないかと思います。

私はこの8年くらい「北アイルランド紛争」について英語でネットで読んだりしているのですが、最も「普通」に馴染んでいるのは、"the Troubles" です (「北アイルランド紛争」は、自分で話したり書いたりするときは、"the Troubles in Northern Ireland" と自然に出てきます)。

この用語法については、アルスター大学CAINデータベースのFAQが明解な説明をしています。

http://cain.ulst.ac.uk/faq/faq2.htm#troubles
Why is the conflict referred to as 'the Troubles'?
紛争が「ザ・トラブルズ」と呼ばれるのはなぜですか。

'The Troubles' is a euphemism that is commonly used in Northern Ireland, and the Republic of Ireland, to refer to the most recent period of civil and political unrest, and violent political conflict (from 1968 to the present). The term has been used in the past to refer to other periods of conflict particularly the Anglo-Irish War (or the War of Independence; 1919 - 1921). ...
「トラブルズ」というのは、北アイルランドやアイルランド共和国で、直近の社会的・政治的不安および暴力的な政治紛争の時期(1968年から現在まで)のことを言うために一般的に用いられているユーフェミズム(婉曲語法)です。過去においては、特に英愛戦争(独立戦争、1919年から1921年)の紛争の時期について用いられていました。……


というわけで、conflictと言おうがtroublesと言おうが、本質的には同じです。(「内戦 civil war」未満、っていう感じですね。)

なお、the Troublesを日本語にする際に「問題」という訳語を当てることもありますが、会話文で英国人が「あの地方にある問題 the Troubles in the Province」(→ the Provinceについては【質問8】を参照)と述べている(そして、さすがは英国人だ、遠回しだ、といった人物描写が行なわれている、など)、とかいうのでもない限りは、厳密に訳語を分ける必要はないと私は思います。(むろん、このような用語法に「矮小化」の意図を見るというのも必要なことではありますが。)

ちなみに、"northern ireland" と "war" という語で検索するとものすごい数のサイトがヒットしますが、この "war" の相当数は第一次大戦、第二次大戦やアイルランド内戦、アイルランド独立戦争のことで、ほかは、慣用表現・定型表現の一部だったり ("turf war", "war of words", "war and peace" など)、「北アイルランド紛争」とは直接関係のない政治運動のスローガンで用いられている比喩表現の一部だったり ("war on want" など)、はたまた俗語としてのwarであったり(サッカーのサポーター同士の「戦争」など)……という感じですが、その中に、「北アイルランド紛争」を「戦争 war」とみなしている言説が、ごく少数ですが、存在します。武装組織がそれをそうみなしている、という例です。

例えば:
War Ends for Militant Group in Northern Ireland
http://www.nytimes.com/2007/11/12/world/europe/12ulster.html?_r=1&oref=slogin
2007年11月、UDAの活動停止・解体宣言のときのもの。(→この件については本館で

The end of the IRA's 'long war'
http://www.opendemocracy.net/democracy-protest/IRA_2711.jsp
2005年7月、Provisional IRAの武装闘争終結宣言のときのもの。(→この件については本館で

※まあ、Provisional IRAの "Long War" っていうのはほとんど固有名詞化しそうなスローガンなのですが。

こういった例のほか、武装組織メンバーが「あれは『戦争 war』だった、自分は『兵士 soldier』だった」と語っている例は、NI紛争についての英語の本を1冊入手すれば、必ずどこかに出てくると思います。
posted by nofrills at 21:00 | TrackBack(0) | 北アイルランド紛争FAQ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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*参考書籍*

北アイルランド紛争についての英書

英語ではとても読みきれない(買いきれない、収納しきれない)ほどの本が出ていますが、筆者は特に下記の書籍を参照しています。
※画像にポインタを当てると簡単な解説が出ます。

031229416607475451970717135438
The IRA
Tim Pat Coogan
Loyalists
Peter Taylor
Killing Finucane
Justin O'Brien

北アイルランド紛争について、必読の日本語書籍
筆者はこのブログを書く前に、特にこれらの書籍で勉強させていただいています。

4621053159 4846000354
IRA(アイルランド共和国軍)―アイルランドのナショナリズム
アイルランド問題とは何か
鈴木 良平

北アイルランド紛争の歴史
堀越 智

IRA―アイルランドのナショナリズム(第4版増補)
鈴木良平

458836605X
暴力と和解のあいだ
尹 慧瑛
→「北アイルランド」での検索結果
→「Northern Ireland」での検索結果
* photo: a remixed version of "You are now entering Free Derry",
a CC photo by Hossam el-Hamalawy
http://flickr.com/photos/elhamalawy/2996370538/


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