「北」に限らず、アイルランドにおける「ユニオニズム Unionism」の「ユニオン Union」とは、ブリテン(すなわちイングランド&ウェールズとスコットランド)との「連合」の意味です。その連合を維持し、または強化すべきという考えが「ユニオニズム」、そういう考えを持っている人が「ユニオニスト Unionist」です。全体の理解のために簡単な説明が必要なときには「親英派」と言ってもよいでしょう。(ただし「常に英国の言うことを聞く」という意味に解釈してはなりません。)
元々は、19世紀後半から20世紀はじめにかけて「アイルランド自治法 Home Rule」でウエストミンスターの英議会がものすごいことになっていたときに、「自治反対」の立場を取った人たちが「ユニオニスト」と呼ばれていました。
つまり、ここまで歴史的視野を広げればすぐにわかると思いますが、「ユニオニズム」は元々は「アイルランドとブリテンのunion」を主張していました。(アイルランドとブリテンの関係については【質問15】で。)
しかし、アイルランド独立戦争 (1919-1921) と1920 Government of Ireland Actとアングロ・アイリッシュ条約以後、アイルランドの26州はブリテンとのunionを離れ(ここらへん、説明を大幅にはしょります)、維持されることのできるunionは、北部6州、つまり「北アイルランド」にしか残されなくなりました。
ですので、現代において「ユニオニズム」というときは、南の26州のことは考えず、北部6州だけを考えればOKです。
参照先:
http://en.wikipedia.org/wiki/Unionism_in_Ireland
※このエントリ、すっごい詳しくて内容もよいですね。
なお、ブリテン島内では、イングランドとスコットランドの関係について「ユニオニズム」であるか「ナショナリズム」であるかの軸があります。でもスコットランドについてはunionistという語はあまり使われていないかもしれません。(逆にnationalistという語は頻繁に使われています。ショーン・コネリーとか、SNP, つまりScottish National Party とか。)
英語屋的に注意が必要なのは、こういった文脈から離れたときのunionistは「労働組合の人 trade unionist」の簡略表現でもありうるという点です。(はい、疲れているときに特に脈絡なく「労組」の話が出てくると、ときどきわけわかんなくなりますが、何か。)